
そろそろさ、俺たちも付き合って半年くらい経つよね。前々から考えてはいたんだけどさ、同棲したいなー…なんて思ってるんだよね。前の飲み会ん時にいたアイツも彼女と同棲しだしたらしくってさー、俺たちもどうだって勧められちゃって。何か今はほとんどインターネットで物件見つけれるって話だから、ちょっと探してみたんだよ。そしたら結構いっぱいあるんだよねーこの近くにも。ほらこのアプリ、ちょっと見てよ。これお前の実家の近くじゃん?こっちは俺の職場の近く。よく行く飲み屋も近いし、思ってたより家賃安いからさー、どうかなって。それで一番良さそうなのはこの物件、よくね?それで実は問い合わせしちゃってさ、今週末に不動産に行く予約しちゃったんだけど、いいよね?確か土曜日は会社も休みで予定もないって言ってたっしょ。

うん。
(マジかーなんであんたが勝手に決めてんだよ!まだ同棲するなんて一言も言っていないし。てゆーかそろそろ別れようと思ってるくらいだし。そりゃあんたの友達だったらあたしも同棲するわよ!だけどあんたとは正直お・こ・と・わ・り!って言ってやりたいんだけど、そういうキャラではないからなー…。まぁいいや。とりあえず不動産屋は勉強のために行っておこう。)

よし、じゃあ土曜日の13時に予約いれたから。ランチからの不動産屋って感じでよろしく。いやーついに俺たちも同棲かぁ。1部屋はゲーム部屋にしよーぜ。それとお前んちの実家の犬も連れていけるようにペット飼える物件にしよっか?引っ越しん時は後輩使って荷物運ばせればタダだし、一応もう声かけてあんだよね。

うん。
(だから勝手に話進めんじゃねーよ。誰が同棲するって言った?うちのペットも連れてかねーよ。てゆーかあんたとは同棲しねーよ。ゲーム部屋なんているか?後輩もかわいそうじゃん。でもこれ話進んじゃったらマズいなぁ。どうしよう、いつ言おうかな、あんたとは別れるって…。うーまぁいいや。とりあえず不動産屋に行ったら考えも変わるかもしれないし。)

はい、いらっしゃいませー。お部屋探しですか?そうですか初めてのお部屋探しですね。えーと住まれるのはお二人?車は2台で、家賃は全部込み10万くらい。新築、ペット飼育可、オートロック、最上階、なるほど。入居時期は…いつでもいいんですね、分かりました。ちょっとお探ししてみますねー。
この時点で、彼女は相槌しかうっていないことが多いです。あまりに彼主導すぎると、物件を紹介する前から「ん?」と感じます。正常なカップルは、彼も彼女にちゃんと意見を求めますが、彼先走りパターンの場合は、ただひらすら彼がしゃべり、彼女はただ愛想笑い(苦笑い?)を浮かべているだけです。
何となくこちらも勝手ながら察するんですが、もちろんそんなことを指摘する訳にもいかないですから、とりあえず彼主導のまま、話を進めていきます。まぁ当然のことながら「物件を見たいんだけど」となりますので、一応はご案内させて頂きますがね、正直その時は「絶対決まらんだろ…」と思ってますよ。それでも次に繋がる可能性がある時はいいんですけど、あからさまに彼女が嫌そうな場合は、「あ、これたぶん別れるな。」って思いますもん。ええ、無駄とは言いません。その後に彼女が一人で部屋探しにきたこともありますからね、一人暮らし用のw
いざ物件に行くじゃないですか。天と地ですよ、彼と彼女のテンションが。彼のテンションは異常に上がり、彼女は…。
彼が

ここめっちゃよくね?
て同意を求めるんですが、彼女は

うーん。
(あたし、なんでこんな人と付き合ったんだろ…)
しか言わないんですよ。

…。
(もう大丈夫、もう分かったから、そろそろ帰ろうよ。彼女の気持ちに気づいてあげてよ。みてよこのテンション。全然楽しそうじゃないでしょ?残念ながら君たちはうまくいかないよ。さ、もう帰ろう。ほら、初期費用だって安くないよ?さっき見積書も渡したでしょ。その金額に家具家電の費用もかかるよ。毎月だって家賃プラス電気代、水道代、ガス代、インターネット代、食費とか、結構かかるよ。悪いことは言わない、もう一回考えよ。彼女と話し合お。申し訳ないがこちらもそんなに暇ではないのだよ、閣下。)

申し込みで。

え、いいんですか???
(いやいや、ちょっと待って。いや、営業マンとしてはめちゃくちゃありがたいよ。売り上げになるからね。でもちょっと待って。彼女見て。もうさっきから無言だよ。これ絶対ダメなヤツだよ。「この物件でいいっしょ」じゃないって。物件どうこうの話じゃなくて、君と彼女の話。ね、とりあえず今日は一旦帰ろうよ。一回落ち着いてよく考えよう。今日来て今日決めなくてもさ、物件はいくらでもあるんだからさ。)

いつまでにお金払えばいいですか?お金ならあるんで。

いや、まぁとりあえず審査がありますから。
(うぉーい、マジか。マジなのか。いいのか?売り上げとして期待しちゃうぞ。審査も通ってないし、まぁそんなに焦るなよ。だけど…。)
確かに営業マンなので、どんな事情であれ、借りて頂けるんだったら別にいいやって気持ちの方が絶対に強いはずです。身内や仲の良い友人か、よっぽど感情移入したか以外は、
「お客さんの事情 < 売り上げ」
ですからね。
でもたぶんそれ、キャンセルになるような気がするんだよね。地味につらいのが、計上した売り上げがマイナスになること。もう全く売り上げとして見込まず、売り上げが他で作れるんならまだいいけど、そこまで売り上げがない、売り上げを作るのに大変な地域や店舗、営業マンだったら、申込書をもらって審査が通るとやっぱり計上するんですよね。それが例えば月末近くにやっぱりキャンセルってなると、結構ダメージなんですよ。
10日後。

すみません、申し訳ないんですが前に申し込みした物件キャンセルって出来ますか?いやホントお恥ずかしい話なんですが彼女と別れちゃいまして…。キャンセル料は…かからないんですね、助かりました。はい、また部屋探しにくるんで、その時はよろしくお願いします。

ええ、またぜひよろしくお願いしますね!
(まぁそれは仕方ないよな。彼女も勇気出して言ったんだね。いや、その方が良かったよ。だって契約しちゃってたり、入居日過ぎちゃってたら大変よ。初期費用も返せなかったり、家具とか家電とかどーすんのってなるしね。売り上げにならなかったのはイタイけど、まぁいいさ。)
結局部屋を借りてませんので、特にアドバイスもありませんが、営業マン的には出来る限り二人の間で結論を出してから部屋探しに来て頂けるとスムーズかと思います、マジで。
でも反対に、部屋探しの過程は相手の価値観を知る絶好の機会ですから(これもマジ)、同棲をする体で不動産屋に行ってみるのもいいかもしれません。相手の本性が分かりますよ…。
ではまた。
必ずしも”彼氏・彼女がいる=幸せ”という方程式が成り立つわけではないでしょう。何となく付き合ってはみたけど、ちょっと微妙かも。付き合うのはいいけど、結婚はないかな。ぶっちゃけ友達に紹介するのも恥ずかしい。本当は彼の友達と付き合いたかった。けど、一応は形式的にはお付き合いをしている状態。なのに、友達に触発されてか、同棲しようって言ってきたんだけど、どうしよう。